私たちが日常的に慣れ親しんでいる透明〜白濁したわらび餅と、京都の名店が供する本わらび餅の間には、原材料の段階で埋めがたい決定的な格差が存在します。
スーパーや一般的な和菓子店で並ぶ製品の原材料表示を確認すると、多くの場合「甘藷(さつまいも)デンプン」「タピオカデンプン」「ゲル化剤(増粘多糖類)」が筆頭に並んでいます。これらは大量生産に適し、冷蔵庫で冷やしても白濁しにくく、長期間ぷるぷるした食感を保てるよう工業的に最適化されたものです。価格も1キログラムあたり数百円程度と極めて安価です。
一方、国産のワラビの根から採取される純粋な「本わらび粉(黒粉)」は、ワラビの根100キログラムからわずか4〜5キログラム程度しか抽出できません。掘り子の高齢化や過酷な採取環境も相まって、現在では1キログラムあたり2万円〜3万円を超える高値で取引される超高級品となっています。さらに、極限まで不純物を取り除いた本わらび粉は、火を入れると天然のアントシアニン系色素や微量成分が酸化し、深く澄んだ「烏羽色(からすばいろ=黒褐色)」へと変化します。
このように、本わらび粉100%と普通の違いを理解すると、価格差の根底にある原材料の枯渇性と、それを形にするための職人の労力が浮き彫りになります。単なる甘味ではなく、日本の豊かな山林と清らかな水、そして途絶えかけた精製技術が合着した「無形文化遺産」とも呼べる贅沢品なのです。