勝新太郎の遺した言葉は、効率性と安全性を重んじる現代において、強烈な毒と輝きを放ち続けています。自著や数々のインタビューで語られた代表的な名言を紐解きます。
- 「俺は勝新太郎という役を演じているんだ」
虚構の映画スターであることを誰よりも自覚し、私生活の破天荒さすらも観客へのエンターテインメントとして差し出していたプロ意識の告白です。 - 「底が丸いから、どこへ転がっても起き上がる」
借金14億円を背負った際に放った言葉。人生の挫折を角張った箱の破壊ではなく、球体の転がりとして捉える圧倒的な楽天主義と生命力が宿っています。 - 「役者は芝居をするな、その人間になれ」
演技指導において勝が口を酸っぱくして語った本質論。テクニックによる偽物の感情を嫌悪し、内面の魂が漏れ出す瞬間だけを信じた映画狂の真髄です。 - 「金は天下の回り物。俺のところを回っているだけだ」
執着を捨て、入ってきた金はすべて現場や人に還元した勝の金銭哲学。資本主義の蓄財思想に対するアンチテーゼでもありました。
1996年、勝は下咽頭癌を告知されます。入院中も医師の目を盗んでウイスキーを口にし、葉巻の煙を燻らせるなど、病魔に冒されても自らの美学を曲げることはありませんでした。そして1997年6月21日、昭和の映画史を駆け抜けた巨星は65歳でその生涯を閉じました。
通夜の席で、中村玉緒は「勝新太郎は最後まで勝新太郎でした。本当に格好のいい男でした」と語り、銀幕の怪優の幕引きを見事に飾り立てました。