巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が貫いた最大の哲学は、T-レックスを単なる怪獣やモンスターではなく、「そこに実在する恐ろしい生物」として描くことだった。怪物の恐ろしさと動物としての美しさ。この絶妙な均衡こそが、作品を風化させない最大の理由だ。
科学的ロジックを提示したマイケル・クライトンの緻密な世界観に、スピルバーグの劇的な映像感覚が見事に合体した。T-レックスの発する咆哮ひとつをとっても、小型犬の鳴き声、ライオンの首振る声、さらには象の赤ちゃんの叫び声まで混ぜ合わせて作られたという。音響からライティングに至るまで、極上のSF映画を創り出すための執念が細部にまで充満していた。