現場で起きている摩擦の多くは、悪意のないすれ違いから発生しています。大手IT企業でシステムエンジニアとして勤務する30代男性(ASD診断)の手記やヒアリングでは、次のような生々しい実態が語られています。 「上司から『この資料、少し直しておいて』と言われ、文法的なミスを数箇所直して提出したところ激怒されました。上司の意図は『全体の構成をクライアント向けに再構築しろ』という意味だったと後から知りました。『少し』という言葉の曖昧さにパニックになり、何を基準にすれば良いのか今でも苦痛に感じます」(当事者の証言) SNSやQ&Aサイトでも「言われた通りに作業したのに融通が利かないと怒られる」「会議の根回しという文化の意味が分からず社内で孤立した」といった投稿が数多く見受けられます。 社会学者のダミアン・ミルトンが提唱した「二重の共感問題(Double Empathy Problem)」という理論が示す通り、これはASD当事者側だけに共感能力の欠如があるのではなく、「非ASD者もまた、ASD者の認知様式や世界の見え方を共感・理解できていない」という双方向のディスコミュニケーションによって生じています。互いの認知プロセスの違いを前提に置かない限り、現場の摩擦は解消されません。
空気が読めないのは障害?大人の発達障害の真相と職場のズレ解消法