コルネリア・デ・ランゲ症候群は、染色体の接着や遺伝子発現調節に関与する「コヒーシン複合体」関連遺伝子の異常によって生じる疾患群(コヒーシノパチー)です。発症頻度はおよそ1万人から3万人に1人と推定されています。
分子遺伝学的検査の進展により、全症例の約60〜70%を占める主原因遺伝子NIPBLをはじめ、SMC1A、SMC3、RAD21、HDAC8といった複数の原因遺伝子が特定されています。大半は突然変異(孤発例)によって生じ、親からの遺伝による発症は極めて稀です。
本症候群の臨床像は極めて幅広く、重症度には個人差(スペクトラム)が存在します。その中でも診断の契機となりやすいのが、以下に挙げる特有の身体的・発達的特徴です。
- 際立った顔貌的特徴:左右がつながった濃く弓状の眉毛(連眉)、長くカールした睫毛、低い鼻梁と前方を向いた鼻孔、薄く下がった上唇、小顎症などが典型例として挙げられます。
- 四肢の形成異常:肘関節の拘縮、小手足、合指症のほか、重症例では橈側欠損など前腕の重度奇形を伴うことがあります。
- 成長障害と小頭症:胎児期からの著しい子宮内発育遅延(IUGR)が見られ、出生後も身長・体重ともに成長曲線を下回るケースが多く見られます。
- 知的障害の程度とコミュニケーション:知的発達症の程度は最重度から軽度まで多岐にわたります。受容言語(他者の言葉を理解する力)に比べて表出言語(自ら言葉を発する力)の発達が遅れやすい特徴があり、身振りや絵カード、ICT機器を用いたコミュニケーション支援が有効です。