スイスの作家ヨハンナ・シュピリによる19世紀の児童文学『Heidi』は、本来極めて強いキリスト教的信仰心と宗教的救済をテーマとした作品であった。原作におけるクララの回復も、神への祈りと信仰の賜物という側面が強く押し出されている。
しかし、高畑と宮崎を中心とする日本の制作陣は、この宗教的背景を現代的かつ普遍的な人間ドラマへと再構築した。神の恩寵ではなく、アルプスの自然の力、人間同士の触れ合い、そして本人の弛まぬ努力によって「歩く」という目的を達成させるプロットへと変更したのだ。この大胆な翻案こそが、宗派や文化的背景を超えて世界中の人々の共感を得る最大の要因となった。