キンチョールのテレビコマーシャルが産声を上げたのは、日本の民間テレビ放送がスタートした1951年にまで遡ります。当初は蚊取り線香の効能を実直に伝える生コマーシャルが中心でしたが、1960年代後半からタレントを大々的に起用するエンターテインメント路線へと大きく舵を切りました。大日本除虫菊CM歴代の作品群を俯瞰すると、それは日本の広告クリエイティブが「説明」から「共感とナンセンス」へとシフトしていく歩みそのものです。
特に制作を一貫して担ってきた電通関西支社のクリエイティブチームは、関西特有の「アホらしさを徹底的に突き詰める美学」を広告に持ち込みました。ただ商品を連呼するのではなく、視聴者が思わずツッコミを入れたくなる違和感をあえて設計する――この方針こそが、後に数々の社会現象を生み出す土壌となったのです。懐かしい昭和平成レトロCMの代表格として語られる歴代作品には、各時代の世相と広告人の野心が克明に刻み込まれています。