日本動物行動学会の最新シンポジウムでも、都市環境における野良猫社会構造の流動性が熱い議論を呼んでいる。哺乳類研究の第一人者である今泉忠明氏をはじめとする専門家らは、猫の社会を「ピラミッド型の専制君主制」ではなく、「同心円状のネットワーク」として捉え直す必要性を早くから指摘してきた。
序列の最上位に位置する猫は「セントラル・キャット(中心猫)」と呼ばれる。彼らは無闇に威圧感を振りまくのではなく、パトロールを通じて自らのフェロモンを要所に残し、自他のテリトリー境界を静かに更新する。万が一他個体と鉢合わせした際も、正面衝突を避けてあくびをしたり毛繕いを始めたりする「転移行動」によって場の緊張を緩和させる。力による威圧ではなく、卓越した外交術とプレゼンスこそが、コミュニティの安定を支える不可欠なピースなのだ。