馬酔木の美しさに隠された最大の注意点が、全草(葉、茎、花、実、樹皮、さらには蜜にまで)に含まれる有毒成分です。
主要な有毒成分は、ジテルペン化合物の「アセボトキシン(Asebotoxin)」や「グラヤノトキシン(Grayanotoxin)」、ロドホモキシンなどです。これらは細胞膜のナトリウムチャネルを異常活性化させ、神経伝達や筋肉の収縮を狂わせる強力な神経毒・痙攣毒として作用します。
人間や動物が誤って摂取した場合、以下のような中毒症状が段階的に現れます。
- 初期症状:口腔内の痺れ、激しい嘔吐、悪心、腹痛、下痢、過度の流涎(よだれ)。
- 重篤化時:血圧降下、徐脈(脈拍の異常低下)、歩行困難、筋力低下、呼吸麻痺、中枢神経の麻痺。
かつて日本では、この毒性を逆手に取った「効能」として、葉や茎を煮出した煎汁を天然の農業用殺虫剤やウジ殺し(衛生害虫駆除)として活用していた歴史があります。民間薬としての経口利用は極めて危険であり、絶対に口にしてはなりません。