草むらに潜む吸血者は、時に命を奪う猛毒の運び屋となる。国内で最も警戒されているのが、主に草地や森林に広く生息するフタトゲチマダニなどが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)だ。病原体であるSFTSウイルスを保有したマダニに咬まれると、6日から2週間の潜伏期を経て牙をむく。
初期症状は風邪に酷似している。38度以上の発熱、全身倦怠感、食欲不振。続いて激しい嘔吐や下痢、腹痛といった消化器症状が襲いかかる。厚生労働省や国立感染症研究所の報告によると、重症化すれば血液中の血小板や白血球が急激に減少し、全身性の出血傾向や意識障害、多臓器不全へと進行する。致死率は10〜30%と極めて高く、有効な抗ウイルス薬やワクチンは一般確立されていない対症療法頼みの危険な疾患だ。西日本を中心に確認されていた感染報告は、近年では東日本や北日本へと着実にその脅威の版図を広げている。