「梅切らぬ馬鹿」ということわざは、「梅はどんな切り方をしても強く芽吹くから、どんどん切れ」という意味ではありません。この格言の本質は、「梅は枝の更新を適切に行わなければ、古い枝には花芽がつかなくなる性質を持っている」という樹木生理の警告にあります。
梅の木は、前年に伸びた短い健全な枝に最も充実した花芽をつけます。剪定を怠って放置された古い枝(古木化した枝)は、年々花付きが悪くなり、やがて枯死してしまいます。つまり、「切らぬ馬鹿」とは「新しい枝へと更新する適切な間引きと切り戻しを怠ってはならない」という意味であり、決して無計画な乱伐を推奨しているわけではありません。
さらに見落とされがちなのが、「花梅(はなうめ)」と「実梅(みうめ)」における剪定目的の違いです。
観賞用として花を咲かせる「花梅」は、花数を増やし美しい樹形を鑑賞するために細い短枝を多く残す剪定を行います。一方で、梅酒や梅干し用の上質な果実を収穫する「実梅(南高梅や白加賀など)」では、枝が混み合うと果実同士が擦れ合って傷がついたり、日照不足で実が小さくなったりします。そのため、実梅の剪定では花梅よりも思い切って間引き剪定を行い、枝数を制限して大粒で良質な実を育てる空間を確保する技術が求められます。