医療機関の呼吸器内科や耳鼻咽喉科の外来において、最も多い主訴の一つが「熱は下がったのに咳だけが2週間以上止まらない」という相談です。SNSや大手Q&Aサイトでも同様の悩みが毎シーズン多数投稿されています。
なぜ風邪は喉の痛みから咳へと移行し、最後まで咳が残るのでしょうか。その理由は、上気道の粘膜構造と生体防御のタイムラグにあります。
ウイルスによって気道粘膜の表面を覆う「線毛細胞」が広範囲に剥がれ落ちると、粘膜下にある知覚神経(迷走神経の終末)がむき出しになります。この状態では、冷たい空気や会話時のわずかな振動、ホコリなどの微小な刺激に対しても過敏に反応し、激しい咳反射が誘発されます。剥がれ落ちた気道上皮が完全に再生するには最低でも2〜3週間を要するため、ウイルスがいなくなった後も咳だけが長期化するのです。
ただし、咳が3週間以上続く場合や、夜間に横になると呼吸がゼーゼー鳴る(喘鳴)場合は、風邪をきっかけに感染後咳嗽(がいしょう)や咳喘息、副鼻腔炎(後鼻漏による咳)へ移行している可能性があるため、自己判断を避けて専門医の受診が必要です。