三島を訪れたなら、まず外せないのが名物のうなぎ料理だ。市内の専門店では、仕入れたうなぎを富士山伏流水に数日間泳がせる「立場(たてば)」と呼ばれる工程を踏む。水温15度前後の清流で泥を吐かせ、余分な脂を適度に落とした身は、驚くほど臭みがなく上品な甘みが際立つ。備長炭でじっくり焼き上げられ、秘伝のタレをまとった蒲焼は、外側が香ばしく中はふんわりとほどける極上の仕上がりだ。
だが、現在の三島の魅力は伝統の鰻だけに留まらない。現地を隈なく歩くと、源兵衛川の遊歩道沿いや古民家を再生した路地裏に、地元客がひっそりと通い詰める隠れ家カフェやビストロが点在していることがわかる。箱根西麓三島野菜をふんだんに盛り込んだ彩り豊かなランチプレートや、自家焙煎コーヒーとともに供される滋味深いスパイスカレーなど、予約必須の人気店が次々と生まれている。並んででも食べるべき伝統の味と、静けさの中で味わうモダンな一皿──どちらを選ぶか悩む時間さえも、この街ならではの醍醐味である。