草木が生い茂るすり鉢状の丘を歩いていると、緑の裂け目にひっそりと隠された入り口が現れる。建築家の中村拓志氏(NAP建築設計事務所)が設計を手掛けた「地中図書館」だ。大地を削って建てるのではなく、土の下に身を潜めるように構えられたこの空間は、建築そのものが地球の表皮の一部になっている。
足を踏み入れると、外の光が天窓から柔らかく差し込み、洞窟のような曲面を描く本棚が奥へと続く。選書されているのは、自然、農、食、哲学、詩など、人間と地球の関わりを深く思索させる約3,000冊。土の断層に包まれるような独特の静寂と湿度の中、ページをめくる指先に伝わる紙の手触りまでが変わって感じられる。建築と自然が互いを侵食し合うことなく共鳴する、極めて稀有な知のシェルターだ。