目に異物が入ると、脳は異物排除の反射として強いかゆみや痛みのシグナルを出します。しかし、目をこすってはいけない理由は極めて明快です。目に入った砂粒や硬いゴミを指で押し付ける行為は、目の表面(角膜や結膜)に対してサンドペーパーを強く擦り付けているのと全く同じ破壊力を持つためです。
こする摩擦によって引き起こされる代表的な病態が角膜損傷と目の傷の症状です。角膜の最表面にある角膜上皮が削れる「角膜上皮剥離(角膜びらん)」を起こすと、激しい眼痛、まぶしくて目が開けられない(羞明)、大量の涙、充血といった症状が一気に現れます。傷口から細菌や真菌が侵入すると「角膜潰瘍」へと進行し、最悪の場合は角膜が白濁して不可逆的な視力障害を残す危険性があります。
自力で洗眼しても目に入ったゴミが取れない理由には、構造的な要因があります。異物が上まぶたの裏側にある溝(瞼板下溝)に入り込んで張り付いてしまうと、表面をいくら洗い流しても外に出てきません。また、植物のトゲや微小な破片がすでに角膜表面に深く突き刺さっているケースもあります。
処置後に「ゴミは出たはずなのにゴロゴロする」という異物感や充血が続く原因の多くは、ゴミそのものではなく、異物が動いた際やすでにこすってしまった際にできた「角膜の傷」が原因です。傷口が神経を刺激し続けるため、あたかもまだ異物が残っているかのような錯覚(ファントム異物感)が生じます。この段階でさらに目を触ると傷を深める悪循環に陥るため、自己判断での処置を直ちに中断しなければなりません。