美坊主という言葉が世の中に決定的なインパクトを与えた契機は、2012年3月に廣済堂出版から刊行された『美坊主図鑑~お寺に行こう、お坊さんを愛でよう~』(日本美坊主愛好会編・定価1,300円+税)でした。「イケメン坊主」「癒し系坊主」「クリーミー系坊主」といった従来の仏教界では考えられなかったポップな切り口で全国の若手僧侶を紹介した同書は、発売直後から大手書店で平積みされ、テレビや週刊誌などの主要メディアがこぞって特集を組みました。
当時の報道各社の取材データや誌面を振り返ると、過酷な修験道山伏の修行に励む佐藤秀仁氏をはじめ、創作和菓子を巧みに作る僧侶など、個性豊かな若手が実名・顔写真付きで多数登場しています。この反響は出版界にとどまらず、人気僧侶を撮り下ろした「美坊主写真集」や、年末の定番となった「美坊主カレンダー」のリリースへと波及しました。
経済誌『プレジデント』のオンライン版でも「若手俳優?いいえ、僕たち『美坊主』です!」と題した特集が組まれるなど、エンタメと宗教の境界を揺るがす社会現象へと発展していったのです。当時の熱気は、単なる一過性の珍奇な流行にとどまらない、より切実な世相の反映でもありました。