全国各地のイオンモールにおいて、食品レジや専門店街の各会計カウンターに並んでいた小型のアクリル製募金箱が撤去された背景には、複合的な店舗運営上の構造変化があります。最大の契機となったのは、フルセルフレジおよび「レジゴー(スマホ型貸出決済端末)」の爆発的な普及です。
有人レジが主流だった時代、募金箱は常にチェッカー(レジ係)の監視下にあり、お釣りを受け取った顧客が自然な動線で小銭を投入できる設計になっていました。しかし、省人化を目的に導入されたセルフレジレーンでは、1名の係員が複数台の端末を遠隔監視する体制が基本となります。無人端末の脇に現金の入った透明アクリル箱を固定設置することは、混雑時における置き引きや盗難の標的となるリスクを跳ね上げることになりました。警察庁や警備関係者からも、不特定多数が瞬時に出入りするメガモールにおいて、監視の手薄な現金の露出を極小化するよう指導が強化された経緯があります。
さらに、社会全体のキャッシュレス決済比率が40%を超え、イオンの利用客においても「イオンカード」「電子マネーWAON」「コード決済」の利用率が7割前後に達したことで、物理的な「小銭のお釣り」自体が発生しにくくなりました。現金を回収・集計し、金融機関へ輸送して入金する一連のオペレーションには膨大な人件費と手数料が発生します。集まる小銭の総額に対して、現金管理に伴う間接コストが釣り合わなくなったことも、レジ横からの撤去を後押しした冷徹な現実です。