発起人リストに並ぶ顔ぶれは豪華を極める。『君の名は。』『すずめの戸締まり』で日本のアニメーション表現を更新し続ける新海誠。そしてカンヌ国際映画祭最優秀男優賞をはじめ世界的な評価を確立した名優・役所広司。ふたりがこのプロジェクトに寄せたステートメントは、興行界の商業主義に対する静かな危機感に満ちていた。
「スクリーンが街から消えることは、その土地の記憶が薄れることと同義だ」。役所は準備会合でそう語ったという。本プロジェクトの中核をなすのは、日本各地の失われゆく風景を記録した新作ドキュメンタリー映画と、地方の国道沿いを舞台にしたロードムービーの2本立てだ。移動式巨大スクリーンと最新音響機材を積んだ特殊車両が、体育館や旧公民館、廃校のグラウンドを一夜限りのプレミアムシアターへと変貌させる。
単なる名作の上映会ではない。新海が監修した特別短編アニメーションや、役所自らが現地で市民と対話するワークショップなど、東京の一等地でも体験できない超濃密なプログラムが用意されている。地方の観客が渇望していたのは、まさにこの本物の手触りだった。