なぜあの言葉は消えた?「キチガイ」放送禁止の歴史と表現の自由についての疑問解決ガイドをご紹介します。

自主規制の波は、新しく制作される番組だけでなく、過去に生み出された名作コンテンツの流通にも抗いがたい影を落とした。その象徴例として今なお語り継がれているのが、特撮ヒーロー番組の金字塔『ウルトラセブン』の第12話「遊星より愛をこめて」を巡る事案だ。作中に登場する宇宙人の設定や関連雑誌の記述が差別的な表現であるとして猛抗議を受け、円谷プロダクションは該当エピソードを欠番処分とした。現在に至るまで、このエピソードは公式な再放送や国内版DVD・Blu-rayへの収録が行われていない。

映画界においても同様の歪みが生じた。1980年に公開され、日本映画史に強烈なインディペンデント精神を刻んだ石井聰亙(現・石井岳龍)監督のバイオレンス映画『狂い咲きサンダーロード』などのカルト作品でも、作中のセリフに含まれる過激な表現や差別的用語が問題視された。テレビ放映やビデオソフト化の際には、音声の一部が無音化(ピー音処理)されたり、該当シーンがカットされたりする事例が相次いだ。制作当時の時代背景や作品が持つ芸術的文脈を無視した一律の修正に対し、映画ファンや批評家からは「作品の価値を損なう措置だ」と強い反発の声が上がり続けている。