靴好きの間でまことしやかに語られる「革靴は後から伸びるから、最初は痛いくらい小さいサイズを買え」というアドバイス。これは半分正解ですが、半分は極めて危険な誤解です。
物理的な事実として、革が伸びて広がるのは「横幅(ボールガース)」と「甲の高さ」のみです。芯材が入っている「つま先(トウボックス)」と「かかと(ヒールカウンター)」の前後距離、すなわち靴の全長(縦の長さ)は1ミリも伸びません。捨て寸が不足して足指の先端が靴の内壁に当たっている状態のものを「伸びるから」と買い、爪の変形や外反母趾を悪化させるトラブルが後を絶ちません。
さらに、合皮(合成皮革)や厚い樹脂コーティングが施されたガラスレザーは、本革(銀付き革)に比べてほとんど伸びません。素材の特性を無視してタイトフィッティングを強行すると、靴が足に馴染む前に履く人の足が破壊されてしまいます。