歴史的な暗黒イメージを現代のポップカルチャーで芸術的に再燃させたのが、新鋭の映画スタジオA24である。彼らが世に送り出した傑作ホラー映画『ウィッチ』(2015年)は、17世紀のニューイングランドを舞台に、孤立した開拓者一家が狂気へと落ちていく姿を描いた作品だ。
この作品で圧倒的な異彩を放ったのが、「ブラック・フィリップ」と名付けられた一頭の黒山羊だった。静寂の中で家族をじっと見つめるその佇まいは、観客に直接的な暴力以上の底知れぬ静かな絶望感を与えた。同作の成功以降、映画業界におけるオカルトホラーの文脈において、山羊は単なる動物ではなく「日常に潜む邪悪の代弁者」として確固たるポジションを確立することとなった。