どれほど縁起の良い金額を用意しても、納め方や参拝の所作が乱れていては本末転倒です。境内での立ち居振る舞いは、自身の精神状態を映し出す鏡でもあります。
最も避けるべき禁忌は、「賽銭箱へ小銭を乱暴に放り投げる行為」です。初詣の混雑時、遠くから賽銭箱めがけてコインを投げつける光景を見かけますが、これは神仏に対する供物を投げ捨てているのと同じであり、極めて非礼な振る舞いです。正しくは、賽銭箱の前に静かに立ち、腰を少し落として滑らせるようにそっと落とし入れます。小銭が木箱に吸い込まれる微かな音に耳を澄ませる瞬間こそが、日常の雑念を払い心を鎮める契機となります。
賽銭を納めた後の参拝作法も、神社とお寺で明確に区別しなければなりません。
【神社の基本作法:二礼二拍手一礼】
1. 賽銭を静かに納め、鈴があれば一度鳴らす。
2. 深いお辞儀を二回繰り返す(二礼)。
3. 胸の高さで両手を合わせ、右手を少し手前に引いて(ずらして)二回手を打つ(二拍手)。
4. 指先を揃えて静かに祈願・感謝を捧げる。
5. 最後に深く一度お辞儀をする(一礼)。
【寺院の基本作法:合掌一礼】
寺院では絶対に手を叩いてはいけません。賽銭を納め、静かに胸の前で手のひらをぴったりと合わせ(合掌)、静かに目を閉じて祈りを捧げ、最後に深々とお辞儀(一礼)を行います。拍手は神道の神を呼ぶ作法であり、仏教の慈悲に対面する場では静寂の合掌が鉄則です。