ピアノの正式名称が超長い理由とは?発明の歴史と仕組みの真相について知っておくべき 事実を分かりやすい構成で解説いたします。

クリストフォリが成し遂げた最大のブレイクスルーは、従来の鍵盤楽器が抱えていた表現の限界を打ち破った点にある。当時親しまれていた代表的な鍵盤楽器には「チェンバロ」と「クラヴィコード」があったが、それぞれに一長一短が存在していた。

チェンバロは、鍵盤を押すとプレクトラムと呼ばれる爪が弦を「はじく(撥弦)」仕組みを採用していた。澄んだ華やかな大音量が出る一方で、指のタッチの強弱で音の大きさを変化させることが構造上ほぼ不可能だった。一方のクラヴィコードは、金属片(タンジェント)で弦を「突き押す」構造を持ち、指先の力加減で繊細なニュアンスを付けられたものの、室内用の小さな音しか鳴らせないという弱点があった。

そこでクリストフォリは、弦をハンマーで「叩く」という打弦楽器の仕組みをゼロから構築した。単に叩くだけでは、ハンマーが弦に触れ続けて振動を止めてしまう。彼は、打弦の瞬間にハンマーが自重で素早く元の位置へ戻る「エスケープメント(脱進機構)」を備えたアクション機構を考案した。この機構により、打鍵の強弱がそのままダイナミックな音量変化に直結し、なおかつ弦が自由に響き続ける画期的な演奏性が実現したのである。