限られた滞在時間で鞆の浦の真髄に触れるなら、朝の澄んだ空気とともに港のシンボルである常夜燈周辺から歩き始めるのが鉄則だ。静けさに包まれた海辺の風情を味わった後は、福禅寺の「対潮楼」へ。座敷越しに望む弁天島と仙酔島のパノラマは、かつて朝鮮通信使の高官が「日東第一形勝(朝鮮より東で一番美しい景勝地)」と称賛した言葉そのままの絶景を描き出す。
散策の途中で外せないのが、地元グルメの真骨頂である名物「鯛料理」だ。瀬戸内の激しい潮流で育った身の引き締まった天然真鯛を贅沢に使った「鯛めし」や「鯛茶漬け」は、一口ごとに上品な旨味が口いっぱいに広がる。さらに最近では、築100年以上の蔵を改装したカフェで味わう鞆の浦特産の薬味酒「保命酒(ほうめいしゅ)」を使った自家製スイーツや、瀬戸内レモンのクラフトソーダなど、洗練された最新グルメスポットも続々と誕生している。
午後は、迷路のように入り組んだ路地裏に身を潜める隠れ家ショップや、幕末の足跡が残る記念館を巡る。夕暮れ時には仙酔島へと渡る渡船から茜色に染まる港を眺めれば、歴史のロマンと現代の心地よさが完璧に調和した一日を締めくくることができる。