リアルさを左右する心臓部は、赤く輝く翅(はね)を覆うサテンステッチの角度だ。多くの初心者が真横や円周に沿って縫い進めようとして失敗する。正解は、中心線から外側へ向けてわずかに斜め45度の放射状に針を落とすこと。こうすることで光が当たった際にハイライトが中央に走り、本物さながらの奥行きが生まれる。
そして、てんとう虫の個性を決定づける黒い斑点や頭部にはフレンチノットステッチを配置する。針に糸を巻きつける回数は2回が鉄則だ。巻きつけた後、布に針を戻す際に糸を引き締めすぎず、指先で優しくループを押さえながら裏へ通す。このひと手間で、粒立ちの揃った美しい黒目が仕上がる。糸の引き加減ひとつで表情が激変するシビアさこそが、この針仕事の醍醐味と言える。