ネット上の言説などで「soccerはアメリカ人が勝手に作った言葉」「イギリス人は昔からfootballとしか言わない」といった意見を見かけることがありますが、これは歴史的な事実とは異なる典型的な誤解です。
19世紀中頃のイングランドにおいて、近代フットボールの統一ルールを策定する動きが進む中で、手を使うラグビー式(Rugby Football)と、主に足を使う協会式(Association Football)の2つに分岐しました。このとき、オックスフォード大学などのエリート学生たちの間で流行していた俗語形成の習慣(語尾に「-er」をつけるスラング)により、「Association」の真ん中の音節を取って「soc-cer(サッカー)」という愛称が生み出されたのが語源です。
実際、20世紀中盤までのイギリス国内メディアや一般市民の間でも「soccer」という単語はごく自然に使用されていました。しかし、1970年代から80年代にかけてアメリカで北米サッカーリーグが台頭し、アメリカ文化として「soccer」という呼び名が強調されるようになるにつれ、イギリス側で「アメリカナイズされた外来語」に対する反発感情が生まれ、伝統的な「football」への回帰が強まったという社会言語学的な経緯が存在します。