世界的な知名度を得る一方で、科学的懐疑論者(スケプティクス)やメディアからは「巧妙なやらせではないか」「親による創作・商業的演出ではないか」という厳しい追及も相次ぎました。ネット上や学術界で提起された主な懐疑ポイントは、大きく分けて以下の3点です。
第一に指摘されたのが、「潜在記憶(クリプトムネシア)」と事後情報の刷り込みです。ジェームズ少年は悪夢を見始める前の生後18カ月頃、父親に連れられてテキサス州の飛行博物館を訪れていました。懐疑派は「博物館で見た展示や映像、大人の雑談を無意識に吸収し、それを自分の記憶として夢に見たのではないか」と主張しました。
第二は、親による「誘導尋問(ガイディング・クエスチョン)」です。子供は親の喜ぶ反応を無意識に察知し、話を合わせる傾向があります。父親が「船の名前はナトマか?」「硫黄島のことか?」と尋ねることで、少年の中に後天的なストーリーが形成されたのではないかという疑念です。
しかし、これらの疑惑に対し、子供の前世記憶研究で知られるバージニア大学知覚研究所(DOPS)のジム・タッカー教授らは詳細なケーススタディを実施しました。タッカー教授の分析によれば、ジェームズが語った詳細情報の多くは、一般向けの博物館展示や市販の書籍には一切記載されておらず、軍の保管倉庫からマイクロフィルムを取り寄せて初めて判明するレベルの極秘データ(撃墜当時の天候、僚機の配置、個人の家族史など)が含まれていました。2歳から3歳の幼児が意図的にそれらを収集することは物理的に不可能であり、単なる「偶然」や「親の誘導」だけで説明をつけるには無理がある、というのが研究者たちの見解でした。