舞台となった神奈川県鎌倉市のエレガントな情景も、本作に欠かせない重要な主役のひとつだ。江ノ島電鉄ののどかな走行音、極楽寺駅の素朴な改札、御霊神社の参道、そして由比ヶ浜の夕景。
千明と和平が暮らす古民家のロケーションは、都会の喧騒から離れた大人の隠れ家としての憧れを掻き立てた。ふたりが駅のホームでばったり出会い、他愛のない文句を言い合いながら歩く坂道。あの街の空気感そのものが、登場人物たちの感情の揺らぎを優しく受け止めるクッションとなっていた。
観光地としての鎌倉の魅力だけでなく、そこに暮らす人々の生活の手触りを丁寧に切り取った映像美は、今なお色褪せない。