ネット上や参拝者の間でも「飲み食いしないのに排泄はあるのか」「我慢しているのか漏らしてしまうのか」といった疑問が絶えません。しかし、記録と証言が明かす排泄の実態は、人体の生理限界がもたらす極めて合理的かつ過酷なものでした。
結論から言えば、堂入り中もトイレには行きますが、排泄量は極限まで減少し、大便は9日間で1回出るか出ないか、小便も終盤は1日にごくわずかとなります。その詳細なメカニズムは以下の通りです。
第一に、大便についてです。行者は堂入りに入る数日前から、粥や少量の野菜など徐々に食事量を極限まで減らし、事前に浣腸に近い形で腸内を完全に空っぽにする調整を行います。堂入り期間中は一切の固形物を口にしないため、胃腸内に新たな便が生成されることは基本的にありません。過去の達成者の手記によると、腸壁の古い粘膜やわずかな老廃物が排出される程度で、9日間のうち最初の数日に1回排出されるか、あるいは一度も出ずに終わるケースが大半を占めます。
第二に、小便についてです。水分を1滴も摂取しないため、体内の水分は呼気や皮膚からの不感蒸泄によって刻一刻と失われていきます。初日こそ前日までの水分が尿として排出されますが、3日目、5日目と進むにつれて腎臓が水分を再吸収し、極限まで濃縮されます。尿の色は黄色から濃い茶褐色、赤褐色へと変わり、終盤の7日目から9日目にかけては1日に1回、わずか数滴からスポイトで吸い取れる程度の量しか出なくなります。
第三に、トイレへの移動方法です。堂入り中は不眠不臥と絶食により、中盤以降は筋力が著しく低下し、立ち上がることすら命取りの立ちくらみ(起立性低血圧)を引き起こします。そのため、行者が便所へ向かう際は必ず「助僧(身の回りを世話する僧侶)」が両脇を抱え、身体を支えながら連れて行く体制が敷かれます。決して行者を一人きりにせず、意識の喪失や転倒事故を24時間体制で防いでいるのが現場のリアルです。