物語の主人公である10歳の少女・荻野千尋。当初は不機嫌で無気力な現代っ子として描かれる彼女だが、異界での労働を通じてたくましく変化していく。宮崎駿監督が千尋のモデルとしたのは、実際に監督の知人の娘である10歳の少女だ。あえて「どこにでもいる普通の少女」として造形された千尋は、ヒーロー像の解体と再構築を象徴している。油屋で「千」という名を奪われ、自己のアイデンティティを喪失しかけながらも生き抜く姿は、労働と無名化という現代社会の残酷な側面を浮き彫りにする。
千尋を陰から支える美しくも謎めいた少年・ハク。彼の正体が「ニギハヤミコハクヌシ」という河川の神であることは物語のクライマックスで明かされる。ハクのモデルとなったコハク川が人間によって埋め立てられ、マンションへと姿を変えていたという裏設定は、高度経済成長期の環境破壊に対する直接的な批評だ。白龍としての姿と人間の少年の姿を行き来する彼の立ち振る舞いには、神聖さと悲哀が同居している。