本作を語る上で欠かせないのが、画面越しに圧倒的な透明感を放つ出演者・女優陣のキャスティングと、それを束ねた監督の手腕です。竹映の作品一覧を振り返ると、多様なジャンルの意欲作が並びますが、その中でも『ひるねの森』は際立って詩的な質感を持っています。
劇中で主演を務めた女優をはじめとするキャスト陣は、記号的な演技を徹底的に削ぎ落とし、あたかもドキュメンタリーの被写体であるかのような自然体の佇まいを見せています。当時の制作陣が残したインタビュー記録によれば、監督は現場で細かなセリフの指示をあえて出さず、ロケーションの空気感に出演者を馴染ませる手法を採用していました。この演出意図が見事に結実し、観客に対して「どこかに実在するかもしれない森の記憶」を想起させることに成功しています。
竹映の他作品が娯楽性やストレートな刺激を追求していた時期にあって、本作のように静謐さと情緒を前面に押し出したアプローチは極めて実験的であり、結果としてレーベルを代表する記念碑的タイトルとして現在も詳細まとめが作られるほどの存在感を確立しました。