弱冠19歳で単身ニュージーランドやアメリカの巨大セットへと乗り込んだ七之助を温かく迎え入れたのが、主演兼プロデューサーを務めたトム・クルーズでした。世界最高峰のスーパースターであるトムは、日本文化と武士道の精神に対して並外れたリスペクトを払っており、日本の伝統芸能の正統な後継者である七之助に対しても終始敬意を欠かしませんでした。
撮影現場において、トム・クルーズは七之助の集中力と、カメラが回った瞬間に放たれる神々しいオーラを高く評価していました。後年のインタビューで七之助本人が語った回想によると、言葉の壁やハリウッド特有の張り詰めた緊張感の中で押しつぶされそうになっていた自身に対し、トムは常に優しく声をかけ、リハーサルでも目線を合わせながら芝居の呼吸を整えてくれたといいます。
また、劇中で重要な精神的支柱となった渡辺謙の存在も絶大でした。すでにハリウッドの現場に堂々と適応していた渡辺謙は、同郷の若き役者である七之助を気遣い、現場での立ち回りやメンタル面でのアドバイスを惜しみなく送りました。異国の地で孤軍奮闘するプレッシャーを跳ね除け、名優たちと対等に渡り合った現場経験は、七之助にとって俳優人生の決定的な糧となりました。