阪神・淡路大震災の記念館として神戸の臨海部「HAT神戸」に設立された人と防災未来センターは、単なる歴史資料の陳列にとどまらず、五感で危機を認識させる独自の展示構成が特徴です。施設は主に「西館(防災・減災体験フロア)」と「東館(防災・減災学習フロア)」で構成されており、来館者の動線は西館4階からスタートします。
同館の象徴とも言える最大のハイライトが、西館4階の「1.17シアター」です。震災発生の瞬間である午前5時46分を、大型スクリーンと立体音響、特殊効果プレートを用いて再現した約7分間の震災追体験映像は、地響きや建物の倒壊、激しい火の手をリアルに表現しています。取材時の現地観察でも、上映終了直後のフロアには一瞬の静寂が広がり、当時の破壊力を追体験した来館者が息を呑む姿が印象的でした。
シアターを抜けると、震災直後の神戸・菅原市場周辺を実物大で再現したジオラマ空間「大震災ホール」へと続きます。散乱した瓦礫、折れた電柱、傾いた家屋、そして立ち込める煙の演出は、映像だけでは掴みきれない災害現場の生々しいスケール感を伝えてくれます。さらに西館3階では、被災者から寄贈された生活用品や写真、当時の特番インタビューや手記に記された「あの瞬間の証言」が多数展示されており、震災を知らない世代にも当時の葛藤と助け合いの歴史を克明に語りかけます。
一方の東館では、近年の気候変動に伴う風水害対策や、将来発生が懸念される南海トラフ巨大地震への備えを学ぶ「防災学習」のコンテンツが充実しています。最新の3Dシアター映像や体験型ワークショップ、タッチパネル式の学習端末を通じて、災害時に自分がどのような行動を取るべきかを実践的にシミュレーションできます。歴史の記憶を伝える西館と、未来の命を守る術を学ぶ東館が見事に連携しており、知的好奇心と防災意識の双方を満たす完成度の高い構成となっています。