ムスリムの礼拝(サラート)は、気まぐれに行われるものではなく、1日の生活リズムの中に緻密に組み込まれています。非ムスリムが礼拝を理解する上で不可欠となるのが、時間帯と方角、そして身を清める儀礼です。
イスラム教礼拝時間は太陽の運行に基づいて決まるため、季節や地域によって毎日数分ずつ変動します。1日の祈りは以下の5回で構成されます。
- ファジュル(Fajr):夜明け前(東の空が白み始める時間帯)
- ズフル(Zuhr):正午を過ぎ、太陽が天頂から傾き始めた時間帯
- アスル(Asr):午後(影の長さが物体の高さと同じになる頃から日没前)
- マグリブ(Maghrib):日没直後(夕焼けが消えるまで)
- イシャー(Isha):完全に夜になり、暗闇が広がった時間帯
オフィスワークや工場勤務で実務に直結するのは、日中のズフル(正午過ぎ)とアスル(午後3時〜4時前後)の2回です。1回の礼拝にかかる時間は準備を含めておおむね10分から15分程度であり、何時間も拘束されるものではありません。
祈りを捧げる際には、聖地メッカのカアバ神殿を向く必要があります。この方角をキブラ方角と呼び、日本列島から見ると西南西(約290度前後)に位置します。現在はスマートフォン専用のコンパスアプリを活用して数秒で方角を割り出すのが標準的です。
また、礼拝マナーと作法において極めて重要なのが、祈りの前に水で身体の一部を清める「ウドゥ(小洗浄)」です。手、口、鼻、顔、腕、頭、足首までを決められた順序で洗い流し、身も心も清浄な状態にした上で、敷物(サッジャーダ)を敷いて神に祈りを捧げます。礼拝中のムスリムは神との対話に集中しているため、目の前を横切ったり、大声で話しかけたりすることは厳禁とされています。
さらに週に1度、特別な重みを持つのが金曜礼拝の実態です。イスラム教において金曜日は集団で祈りを捧げる特別な安息日と位置づけられており、正午過ぎのズフルの時間帯にモスクへ集まり、導師(イマーム)の説教(フトバ)を聞いて集団礼拝(ジュムア)を行うことが成人男性にとって極めて重要な宗教的義務とされています。このため、金曜日だけは昼休憩を長めに取得して近隣モスクへ向かうムスリム労働者も少なくありません。