多くの女性が「急激に色が濃くなった」と実感する転換期が、妊娠と授乳期です。妊娠・授乳後の色調変化の理由には、母体を守り赤ちゃんを育むための明確な生物学的意義が存在します。
妊娠初期から血中濃度が急上昇するプロゲステロンやプロラクチンなどのホルモンは、乳腺組織を発達させると同時にメラノサイトを強烈に刺激します。これにより、乳頭および乳輪全体が広範囲にわたって濃い褐色へと変化します。視覚が未発達な新生児に対して授乳位置を認識しやすくするための生存戦略の一環とも言われており、病的な異常ではありません。
授乳期に入ると、赤ちゃんの吸引による強い物理的摩擦が連日加わるため、炎症性の色素沈着が重なります。授乳終了後、ホルモンバランスが元の状態に戻るにつれて半年から1年程度で徐々に色は落ち着いていきますが、長期間の刺激によって定着してしまった濃いメラニンは完全に元の状態に戻らないケースも散見されます。