本作の魅力を語る上で欠かせないのが、作詞を手掛けた康珍化と、作曲・編曲を担った林哲司による職人技の結晶です。楽曲タイトルの「サスピション(Suspicion)」とは「疑惑」や「不信」を意味する言葉であり、単なる夏のお祭り騒ぎとは一線を画すストーリーが紡がれています。
歌詞で描かれるのは、夏の夕暮れの海沿い、車内で向かい合う男女の張り詰めた空気感です。助手席に座る恋人のわずかな態度の変化から、自分以外の誰かに心を奪われているのではないかという疑惑に苛まれる男性の焦燥感が、映画のワンシーンのように鮮明に切り取られています。
林哲司はこのシリアスな詞世界に対し、マイナー調の憂いを帯びたメロディにメジャーセブンスなどのテンションコードを巧みに織り交ぜた洗練されたコード進行を構築。哀愁と都会的なドライビングフィールを同居させることで、聴く者の心を一瞬で掴むドラマチックなサウンドスケープを完成させました。