東京都千代田区の神田錦町界隈は、長らく日本のビジネスと文化を支えてきた歴史的蓄積を持つ地域だ。かつては印刷工場や出版社、大手企業の本社が密集していたが、時代の変化とともに都市再開発の波が訪れた。老朽化した建築物の建て替えだけでなく、地域全体の回遊性や防災機能を向上させる試みが進められたのだ。
その中核を担ったのが住友商事や安田不動産をはじめとする事業者グループである。彼らは単に高層階の床面積を増やすだけの開発を拒み、低層部に豊かな公開空地と植栽を配置することを選択した。高さのある最先端オフィスビルでありながら、地上部分には木漏れ日が差し込み、近隣住民や観光客が自由に腰掛けられるベンチが点在する。この緻密なグランドレベルの設計こそが、無機質になりがちなビジネス街に人間味あふれる温もりを呼び戻した理由だ。