現在、工房の現場では伝統の継承と素材への飽くなき探求がかつてない純度で進められている。現代の気候変動による湿度や気温の激しい乱高下は、米と対話する職人にとって最大の試練だ。山下武夫氏をはじめとする熟練の作り手たちは、毎朝の空気の肌触りだけで米の蒸し時間や乾燥度合いをミリ単位で調整している。
その製法は途方もない。上質なもち米を蒸し、臼で丹念についた生地を極限まで薄く延ばす。それを賽の目に刻み、天日に干しては湿り気を抜き、火の加減を指先の感覚だけで測りながら大鍋でじっくりと煎り上げる。外側は薄氷のようにパリッと硬く、中は完全に空洞。芯に熱を均一に通す門外不出の火入れ技術こそが、噛む間もなくフワリと溶ける奇跡の食感を生み出す心臓部である。この気の遠くなるような多段階の工程には、いかなる最新機械も立ち入れない。