時任三郎が切り開いたもう一つの金字塔が、本格的な医療ドラマおよびヒューマンドラマにおける圧倒的な父親像・人間像の構築だ。フジテレビジョンが制作し社会現象となった『Dr.コトー診療所』では、孤島の過酷な自然と共に生きる漁師・原剛利役を熱演した。
無口で頑固、しかし誰よりも息子を深く愛する父親の姿は、多くの視聴者の涙を誘った。巨大な波に立ち向かう海の男の厳しさと、病に倒れた息子を前にしたときの脆さ。そのコントラストを見事に体現し、作品のリアリティを根底から支えた。
さらに近年、同じくフジテレビジョンの月9枠で大きな反響を呼んだ『監察医 朝顔』では、主人公の父親であり実直なベテラン刑事を演じた。東日本大震災で妻を失い、悲痛な喪失感を抱えながらも娘や孫と共に日々の食卓を囲む姿は、静かな感動を呼んだ。大仰なセリフに頼らず、日常の些細な仕草や沈黙によって家族の絆を表現するその手腕は、まさに至高の領域と言える。