世界各地の神話体系には、それぞれ独自の死生観や自然観を色濃く反映した魅力的なモンスターが多数登場します。ここでは代表的な4大体系の主要生物を概観します。
ギリシャ神話の怪物一覧を紐解くと、神々の秩序に抗う混沌の象徴として怪物が描かれる特徴があります。万物の父ゼウスすら追い詰めた怪物の王テュポーンをはじめ、獅子・山羊・蛇が融合したキマイラ、視線を合わせた者を石化させるメデューサ、首を切り落としても再生するヒュドラなど、英雄譚の試練として立ちはだかる個性的な異形が揃っています。
一方、北欧神話の幻獣の特徴は、過酷な極北の自然環境と「終末(ラグナロク)」の宿命に直結している点です。主神オーディンを呑み込む巨大狼フェンリル、世界を取り巻く大蛇ヨルムンガンド、世界樹ユグドラシルの根を齧る邪竜ニーズヘッグなど、世界そのものを崩壊させるスケールの巨大生物が物語の主軸を担います。
東洋に目を向けると、日本神話と妖怪の違いが興味深い論点となります。日本神話に登場するヤマタノオロチや八咫烏(ヤタガラス)、九尾の狐などは、荒ぶる自然神や神の使いとしての性格を強く帯びています。対して中世以降に定着した「妖怪」は、民俗社会の日常に現れる怪奇現象や民衆の不安が擬人化されたものであり、信仰の対象となる神話生物とは発生の位相が異なります。
20世紀初頭にH.P.ラヴクラフトらによって創造されたクトゥルフ神話生物の一覧は、従来の神話とは一線を画す「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」を体現しています。海底に眠る旧支配者クトゥルフ、変幻自在の混沌ニャルラトホテプ、時空を超越するヨグ=ソトースなど、人間の理解や理性を完全に拒絶する異形の存在が特徴です。