世界初エベレスト登頂の田部井淳子を支えた夫・政伸の献身と絆にまつわる興味深い視点を詳しく紐解きます。

登山家としての顔と、温かな母としての顔。その両立を可能にしたのは、家庭内に根付いていた独自のバランス感覚だった。後に誕生した長男の田部井進也氏は、両親が築いた家庭環境について、常に笑いが絶えず互いを尊重し合う空間だったと振り返っている。

進也氏をはじめとする家族にとって、山へ向かう母を見送ることは日常の一部であり、同時に母の留守を当たり前のように支える父の姿が誇りでもあった。家父長制の価値観が根強かった昭和の時代に、田部井家では家事も育児もごく自然に分担されていた。誰かが夢を追うとき、残る家族がそれを全力で応援する――そんな柔軟で強靭な家族の絆が、進也氏の言葉からも鮮明に伝わってくる。