事件報道「バールのようなもの」元ネタの正体と警察が断定を避ける訳に関する話題のニュースを分かりやすく解説します。関心のある方は必見です。

この警察用語の奇妙な言語感覚にいち早く着目し、文学的な傑作へと昇華させた人物がいる。SF界の巨匠・筒井康隆だ。1969年、筒井が世に放った短編小説『バールのようなもの(小説)』は、当時の出版業界に大きな衝撃を与えた。

作中では、報道で使われる「バールのようなもの」という言葉が一人歩きし、やがて「バールそのものではなく、まさに『バールのようなもの』という未知の物質・概念」として社会を侵食していく様がブラックユーモアたっぷりに描かれる。言葉が指し示す実体と、言葉そのものが持つ虚構性。筒井康隆は、メディアが無意識に垂れ流す定型表現の滑稽さを、鋭い知性で見事に解体してみせた。

読者は腹を抱えて笑いながらも、自分たちが日々受け取っている情報の危うさに戦慄した。半世紀以上前に書かれたこの短編は、言葉の自動化に対する痛烈な批評として、今なお多くの作家やジャーナリストに読み継がれている。