結論から言えば、「小中学生が教室で繰り広げていたシール交換」というコミュニティ現象としての流行は、確かに一度完全に下火となりました。ネット上で「シール帳は流行り終わった」と語られる最大の要因は、かつて当たり前だった放課後や休み時間のコミュニケーション風景が学校現場から消滅した点にあります。
ブームの衰退を招いた最大の引き金は、全国の小学校で相次いだ「シール帳の持ち込み全面禁止令」でした。2000年代前半、熱狂が過熱するあまり、子どもたちの間では「高価な立体シールと安価な平らなシールのレート格差」「貸し借りによる紛失や盗難」「シールを持たない子への仲間外れ」といった深刻な人間関係の摩擦が表面化しました。教育委員会や学校側が私物の持ち込みを厳しく取り締まるようになったことで、日常的な交換の場が物理的に奪われたのです。
さらに、2010年代に入るとスマートフォンの急速な普及がトドメを刺しました。かつてシール帳が担っていた「可愛さの共有」や「他者との緩やかな繋がり」の役割は、携帯電話の赤外線通信やプロフサイト、そしてLINEスタンプやSNSへと完全に移転しました。日本文具資料館関係者や当時の文具流通関係者への取材でも、「女児向けファンシー市場において、シール関連の売上高は2008年頃を境に明確な下降局面へ入った」との証言が得られており、学童カルチャーとしてのシール帳は一度歴史の表舞台から姿を消したのが事実です。