海外で水道水を飲む際、病原菌と並んで注意しなければならないのが「硬水・軟水」の成分的差異である。水に含まれるカルシウムとマグネシウムの含有量を示す硬度は、地域によって劇的に異なる。日本国内の水道水の多くはマグネシウム含有量が少ない「軟水」であるが、欧州大陸や北米の一部、サンゴ礁由来の地質を持つ島々では、鉱物分を豊富に含んだ「硬水」が一般的だ。
ここで落とし穴となるのが、一般的な市販のトラベルガイドの記述だ。「この国は水質基準を満たしており飲用可能」と記載されていても、それはあくまで「細菌学的に安全」という意味に過ぎない。軟水に慣れ親しんだ日本人が過剰なマグネシウムを含む硬水を急に飲めば、胃腸が過敏に反応し、下痢や腹痛を引き起こすケースが後を絶たない。細菌による食中毒ではなく、純粋な鉱物成分への生理反応であっても、旅行中の体調不良という結果は同じだ。ガイドブックの「安全」の二文字を鵜呑みにせず、水質の成分特性まで理解しておく必要がある。