火病はかつて、特定の社会的文脈や家族構造の中で生きる人々に特有の疾患として扱われてきた。これはいわゆる文化依存症候群の代表例として知られ、地域の生活様式や価値観、抑圧的な人間関係のルールが病態の形成に深く関与している。家庭や組織内での自己主張を抑制し、耐え忍ぶことが美徳とされる風土において、発症リスクは跳ね上がる。
一方で、現代の精神医学や心身医学の領域では、この現象を特定の地域や文化圏だけの問題として切り捨てる見解は過去のものとなった。社会構造の多様化に伴い、過剰なストレスと自己抑圧に晒される現代人は、地域を問わず同様の心身反応を示すからだ。精神医学的な問診と、心身医学的なアプローチを組み合わせることで、目に見えない感情の歪みが身体症状へと変容するプロセスをより精密に評価する臨床事例が急増している。