スンニ派とシーア派の決定的な差異は、共同体を率いる指導者の位置づけに端的に表れています。これが「カリフ」と「イマーム」という称号の違いです。
スンニ派が戴く「カリフ(後継者・代行者)」は、イスラム法(シャリーア)を遵守させ、共同体の秩序と安全を守る世俗的・政治的なリーダーです。カリフ自身はあくまで不完全な人間に過ぎず、宗教的な意味での特別な霊力や無謬性(過ちを犯さない性質)は持ちません。スンニ派では、聖典『コーラン』と預言者ムハンマドの言行録『スンナ(慣行)』こそが絶対的な規範であり、「スンニ」という名称もこのスンナに従う人々という意味に由来しています。
対照的に、シーア派における最高指導者「イマーム」は、神から特別な霊的指導力を授けられた血統の継承者です。イマームはコーランの隠された真意を正しく解釈できる存在であり、宗教的にも道徳的にも一切の過ちを犯さない「無謬の存在」と見なされます。シーア派の多数派である「十二イマーム派」では、第12代イマームが幼少期に姿を隠した(幽隠=ガイバ)と信じられており、終末の日に救世主(マフディー)として再臨するまで、最高位のイスラム法学者(イランのアヤトラなど)が代理として信徒を導く構造をとっています。