ネット上の掲示板やSNSでは、定期的に「ソフトバンクグループは負債が数十兆円あり、孫正義も借金まみれで破産寸前なのではないか」という極端な言説が飛び交います。ビジョン・ファンドの巨額赤字が報じられた時期には、こうした悲観論が一般ユーザーの間で急激に拡散しました。しかし、企業会計と富豪のパーソナルファイナンスの仕組みを理解している専門家の視点から見れば、この見方は事実と大きく乖離しています。
まず、同社が抱える負債の多くはノンリコース・ローンや事業会社ごとの独立採算ファイナンスであり、孫氏個人の財産が無条件に差し押さえられる性質のものではありません。さらに、世界の超富裕層が共通して実践している「Lombard Lending(株式担保融資)」という金融手法を孫氏も高度に活用しています。
保有する自社株を売却すると、巨額の譲渡所得税(約20%)が発生するだけでなく、筆頭株主としての議決権比率が低下して経営権が揺らぎます。そこで富豪たちは、株を一切売却せず、保有株を担保に銀行団から極めて低金利で巨額の現金を借入(LTV=担保掛目を厳格に管理)します。借入金には当然ながら所得税が課税されません。この手元資金を活用して新たな投資を行ったり、優良な実物資産を購入したりする手法は、米国のイーロン・マスク氏やジェフ・ベゾス氏らも駆使する資本家の常套手段です。
「借金がある=危険」と捉えるのは、毎月の給料で住宅ローンを返済する給与生活者の固定観念に過ぎません。富豪にとっての借入金とは、自らの株式資産価値をテコにして、税金を払わずに流動性を生み出す極めて洗練された財務ツールなのです。