日本のポップカルチャー史上、最も有名なセリフの一つと言っても過言ではないのが、「あきらめたら そこで試合終了ですよ」という言葉だ。この名言が初めて発せられたのは、中学全国大会の決勝戦。追い込まれた武石中学の三井寿に対し、ベンチからボールを拾い上げた彼が静かに投げかけた一言であった。
集英社の『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった当初から、この言葉は物語の通底音として機能している。単なる精神論の押し付けではない。土壇場において、人間の可能性を極限まで信じ切る者だけが口にできる覚悟の提示なのだ。後に湘北高校バスケットボール部の監督として、山王工業戦という絶望的な点差のなかで桜木花道にこの言葉を再び投げかけたシーンは、読者の心に永遠の深痕を残した。
土壇場で選手自らが思考し、這い上がる力を引き出す。この言葉の真価は、一方的な指示ではなく、受け手の内なる情熱に火をつける触媒となった点にある。