事件発覚直後の2023年3月、運営会社であるあきんどスシローは、迷惑行為を行った少年に対し、約6,700万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴しました。訴状には「客足の激減」「全店舗での衛生対策費用の発生」などが明記され、被害の拡大に応じて請求額をさらに増額する姿勢を示していたため、業界内外に大きな緊張が走りました。
しかし、裁判は法廷での泥沼の長期戦には至りませんでした。提訴からわずか4か月後の2023年7月31日付で、あきんどスシロー側が訴えを取り下げ、調停が成立していたことが明らかになったのです。突如ともいえる訴訟取り下げの背景には、企業防衛と現実的な問題解決を両立させる法務上の高度な判断がありました。
調停条項の詳細は非公開とされていますが、法曹関係者の見解や過去の類似事例から見ても、少年側に6700万円もの現金を実際に支払わせることは物理的に不可能です。例えば過去に発生した蕎麦屋の従業員による不衛生投稿事件では、店舗側から約1385万円が請求されたものの、最終的な和解金は130万円程度に落ち着いた経緯があります。スシロー側にとって最大の目的は「企業の断固たる法的姿勢を示し、模倣犯を抑止すること」でした。少年側が非を完全に認め、真摯な謝罪と再発防止の誓約、そして現実的に履行可能な一定の解決金(あるいは贖罪寄付などの義務)を受け入れたことで、企業としての社会的責任を果たしたと判断されたのが真相といえます。