博多でジャズ喫茶のマネージャーなどを務めながら燻っていた男を見出したのは、漫画界の巨匠・赤塚不二夫だった。福岡のホテルで開かれた伝説的な密室芸を目撃した赤塚は、その常軌を逸した才能に惚れ込み、「東京へ来い」と即座に呼び寄せた。
赤塚は自身のマンションをタモリに明け渡し、多額の小遣いを与え、居候生活を全面的にバックアップした。「これでいいのだ」の精神で無名の怪物を育て上げた赤塚の庇護のもと、タモリは密室芸の第一人者としてカルト的な人気を獲得していく。その後、業界の重鎮が率いる田辺エージェンシーへと所属が決まり、彼の才能は一気に全国区へと解き放たれることとなった。
大手プロの手腕と赤塚の推薦が噛み合い、深夜番組で見せる過激なパロディ芸から、次第にお茶の間の空気を掌握するメインストリーマーへと駆け上がっていく道のりは、戦後エンターテインメントの奇跡と呼ぶにふさわしい。